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−続・ガラス原料あれこれ(63)−
 
[ガラスの溶融]

もう7月も終わりというのに、今年の夏はなかなか
スッキリしません。
関東地方は既に梅雨明けを宣言したようですが、
相変わらずの梅雨空です。
早くカラッとした夏空が見たいものです。

さて、今回のテーマは「ガラスの溶融」です。
ガラスを作るには、バッチ(珪砂、ソーダ灰などの原料を
調合したもの)か、ガラス・カレット(廃ガラス)を溶かして
作ります。いずれにしても、炉(窯)が必要です。
バッチから溶融して、いいガラスを作るためには、
出来るだけ炉の温度を上げた方がいいのです。
当社の標準的なガラス工芸用のバッチである、Aスキ・バッチを
溶融するには、測定場所によって変わりますが、最低1380℃
ぐらいに炉の温度を上げる必要があります。
ところが、そのままバーナーで燃料を空気燃焼させても
なかなかそこまで温度は上がってくれません。
空気中には酸素(O2)が約20%入っていますが、
窒素(N2)も80%も入っています。
ですから、空気のうち80%はエネルギーとならずに
排出されてしまう訳です。

それを防ぐための工夫の一つが、2次空気の利用です。
2次空気とは、燃焼させるための空気をあらかじめ
炉の廃ガスなどによって熱交換器で暖めた空気のことです。
通常では、燃焼用空気は外気温のせいぜい20〜30℃の
ままですが、2次空気を使えば、600℃〜800℃の
温度の空気を使うことが出来るのです。
少し話がややこしいかもしれませんが、要するに2次空気を
使えば、出発点の温度が高くなるのです。
熱交換器って難しそうな名前ですが、例えば廃ガスの通り道
に、パイプとか作っておいてその中に空気を通してやれば、
その空気は熱くなる訳です。

もう一つの方法は、酸素燃焼です。燃料を燃やすのに酸素だけ
を使う方法です。
通常の空気燃焼方式だと、80%の窒素分がロスとなりますが、
酸素燃焼ですと、100%が燃焼されますのでロスがありません。
また廃ガスの窒素酸化物などの発生も少なくなります。
いたれりつくせりですが、無料の空気ではなく、コストのかかる
酸素を使用するので、全体のコストは高くなります。
大手ガラス・メーカーでは、この酸素燃焼炉をすでにたくさん
導入しています。
このようにガラス炉には色々、高い温度を得る工夫がなされて
います。

一方、バッチから溶融する場合には、高い温度が必要ですが、
カレットを溶融すれば、比較的低い温度でガラスを得ること
が出来ます。カレットは元々、ガラス化されている訳ですから、
1300℃ぐらいまで上げてやれば、十分です。
そうすれば、燃料費も抑えることが出来ますし、炉の傷みも少なく
済みます。またガラス化率のロスがないので、炉に投入すれば
100%ガラスになります(バッチの場合80%程度)。
ただし、いわゆる廃ガラスだと品質が落ちて、純度の高いガラス
は作れません。

当社も、カレットを使用してガラス溶融されている
お客様のためにAスキ・カレットBやSを用意しています。
カレットBは塊状、Sは1cmぐらいの粒状です。
しかしながら、本来Aスキ・カレットB/Sはキャスティング用が
主な用途なので、溶融用としてはコストの点や、ハンドリング、溶融性
(泡の切れ易さなど)で、あまり適していません。
そこで、当社もガラス溶融用として、新しいタイプのガラス・カレット
を開発中です。
具体的には、フレーク状タイプのガラス・カレットで炉への
投入も簡単で溶融性も非常に優れたものです。
またコストの点でも、出来るだけ低くなるように検討中です。
現在は、製品化に向けて最終調整の段階です。
ヨーロッパの工房では、カレットでの溶融が一般的になっているようです。
完成次第、またホームページやDMでお知らせしたいと思います。


※(続・ガラス原料あれこれは当社のメールマガジンのバックナンバーです。)

 
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