ガラスの原料は何?と聞かれたら、一般の人が想像するのは、おそらくビンとか板ガラスのカレット(屑)ではないかと思います。確かに、それらも中味をチェックした上で、ガラスを溶解する時に再利用しますが、本来の原料は、「珪砂」と、その他モロモロの原料です。それらを、一定の比率で混合(調合)したもの−バッチといいます−が、ガラスの原料なのです。何も、ガラスははじめからガラスとして自然界に存在している訳ではありません。ちなみに、三徳工業はこのバッチを作ってる会社なのです。
「珪砂」?。そう、たとえば幼い日、公園で遊んだ砂場の砂と、ガラスに使用される珪砂は、基本的に大差はありません。余談ですが、真っ白い砂浜で有名な和歌山の白浜の海岸には、ガラスにも使用されるオーストラリア産の珪砂が時折投入されるそうです。
ガラスの原料としては、まず珪砂。しかし、珪砂だけだと、よほど高温にしないと、ガラス状にならないので、いろんな原料を入れます。一番多いのが、「ソーダ灰」。ソーダというとソーダ水みたいなイメージですが、正式には「炭酸ナトリウム」(Na2CO3)という名称の白っぽい粉です。それから、「炭酸カルシウム」(CaCO3)。これも白い粉で、基本的には、学校の運動場で引かれる白線の白い粉を想像してもらえれば、いいと思います。
この「珪砂」、「ソーダ灰」、「炭酸カルシウム」が一般に良く使われるガラスの3大原料なのです。ですから、この汎用ガラスの事を、「ソーダ石灰ガラス」と呼ぶこともあります。この言葉に対応するガラスとして、「硼珪酸ガラス」(「硬質ガラス」とも呼ぶ)という言葉があります。耐熱ガラスなどに用いられます。くわしいことは、また別の機会に触れたいと思います。
さて、一般のガラスの原料にはその3つの原料が主に使われるのですが、さらに要求される特性に応じて、様々な原料が入れられます。たとえば、鉛。みなさん良くご存じのクリスタル・ガラスと称するガラスは、通常は鉛クリスタル・ガラスを指します。あの、かつては水道管にも使われた(現在は使用されていないようですが)、白っぽい金属の鉛がガラスの中に成分(酸化鉛)として入ると、輝きや光沢が増し、屈折率も大きくなって、ガラスをよりキレイに見せます。またガラスを溶融、成型する際にも、鉛が含まれている方が、より作業しやすくなります。ガラスの中に含まれる量は、多いガラスで24%(本来の鉛クリスタルはこの含有率が要求されます)から、4〜5%まで。鉛の含有率が高いほど、ずっしりと重い感じで、カットなどの加工もより容易になります。
ところが、最近環境問題がクローズ・アップされて、鉛も問題視される傾向があります。果たして、鉛が環境にどうしようもなく悪いのか、という議論はさておき、鉛を入れないで、クリスタルのような輝きを持ったガラスを作る試みがなされています。この、くわしい話は稿をあらためて。
それからガラスの原料には、「カリ」や「ホウ素」、「アルミ」「亜鉛」「バリウム」なども良く用いられます。それぞれの原料がガラスにどんな性質を与えるのか、これから順に紹介してきたいと思います。
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