[クリスタルガラスの話]
今日から11月です。 めっきり涼しくなりました。といってもこれは 東京、大阪の話で、旭川では今朝初雪を観測したそうです。 涼しいどころではありませんね。(^^;;
このところガラスの基礎的なお話を続けています。 今回は「クリスタルガラス」の話です。 前々回、前々々回で「ソーダ石灰ガラス」=「並ガラス」、 「ホウ珪酸ガラス」=「硬質ガラス」の話をしてきました。 「クリスタルガラス」の定義は難しいのですが、 クリスタル=水晶というように、一般的には 透明度、屈折率、密度が高い高級ガラス=きれいなガラスを 指すと考えられます。鉛クリスタルガラスと、 ボヘミアンクリスタルガラスの2種類があります。
クリスタルガラスをガラス組成の側面から考えると、 組成の基本はソーダ石灰ガラスと考えていいと思います。 そのソーダ石灰ガラスの基本に、鉛クリスタルガラスならば、 酸化鉛(PbO)が多く入り、ボヘミアンクリスタル の場合には酸化カリ(K2O)が多く入るということです。 酸化鉛や酸化カリがガラス成分に多く入ることで、 感覚的に言うと「色、艶が良くなる」ということなのです。 カットなどの加工もしやすくなります。 鉛クリスタルは酸化鉛の添加量が24%以上のものを、 フルレッドクリスタル(LEAD CRYSTAL)、 それ以下のものをセミクリスタルと表現する場合もあります。
しかし、最近はヨーロッパを中心にローズ規制など、 鉛に対する風当たりが強くなっています。 ローズ(RoHS)規制とは、ご承知の通り、電気・電子機器に 含まれる鉛、水銀などの有害物質の使用を規制するものです。 しかし、それでもバカラなどの有名クリスタルメーカーの 製品は健在で、今でも高級ガラスの定番となっております。 また車のバッテリーは今でも鉛バッテリーです。 酸化鉛はガラスの中に入ってしまうと、安定していて 外に溶出する度合いも非常に低いのです。 その溶出度も業界できちんと検査、規制されています。 ですから、あまりこの点に関して神経質になる必要はないと 私は思っています。 この問題はとても微妙で、論議し始めるとキリがないのですが。
一方でどうしても鉛が気になるという方々のために当社は 酸化鉛を添加しないで、鉛クリスタルのような輝きを持ち、 かつガラス成形の際にも鉛クリスタルのように作業をし易い Aスキというガラスを以前から販売しております。 鉛レスのクリスタルガラスということです。 ガラス工芸の分野では、おかげさまで、このAスキが 業界標準的なガラスになりつつあります。 当社のフリット、ビレットのシリーズもすべて このAスキをベースにしています。
今回はクリスタルガラスの話でした。 規制もクリスタルのようにスキッと透明だと
いいんですがねぇ。
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