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−続・ガラス原料あれこれ(49)−
 
[ガラスの欠点]

5月も終わりです。もう初夏の趣ですね。
日陰に入ると吹き抜ける風が心地よいです。
ずっとこの状態が続けばいいなと思いますが、もうすぐ
蒸し暑い梅雨が待ってますね。

さて、今回のテーマは「ガラスの欠点」です。
ガラスは理想的には均質であることが大切です。
でも、溶融時にはさまざまなトラブルが起こります。
一番発生し易いのが、いわゆる「ブツ」という白い固まりです。
これは、一見、ガラスの原料である珪砂などが溶け残っている
未溶解物のように見えます。
これらはほとんどの場合、トリディマイト(tridymite)や
クリストバライト(cristobalite)と呼ばれる失透生成物です。
これらは溶融ガラスの表面からナトリウム(Na2O)や硼酸(B2O3)分などが
揮発して、珪酸(SiO2)の濃度が高くなって、結晶物を作る現象です。
ですから白い固まりも顕微鏡で見ると結晶特有の規則的な模様が
観察出来ます。
重要なのは、この固まりが原料から出来るのではなくて、溶融時の
管理状況で起こるということです。
ガラス工房さんでは、よくルツボにガラスを入れておいたままの状態で
何日も作業するといったケースを聞きます。
でも、ガラスは溶融したままの状態で長い時間放置しておくと、
ガラス中の成分が揮発しやすくなり、先程の失透生成物がどんどん
作られてしまうことになるのです。
ですから、溶融ガラスがルツボに残った場合には必ずいったん
ルツボから掻い出してカレットにして、翌日あらためて
溶かし直すといったプロセスを取るべきなのです。
ガラスは、カレットからいくらでもリサイクル出来ます。
でも溶融したままの状態で放置すると、どんどん中の成分が
変化して行ってしまう訳です。
それから、溶融ガラスを入れっぱなしにしておくことによって、
炉材もガラスによって侵食され、ガラスを汚すことにもなります。
ガラスのもう一つの欠点である、節(ふし、ノット)や脈理も
揮発によってガラスの成分が不均質になることによって起こる場合と、
炉材がガラス成分中に入り込むことによって起こる場合があります。

このように、いいガラスを作るためには、溶融管理が大変重要になります。
江戸っ子は「宵越しの銭は持たねえ」といったそうですが、
ガラスも宵越しは良くないということですね。


 
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