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−続・ガラス原料あれこれ(65)−
 
[ガラスの合わせ]
※(続・ガラス原料あれこれは当社のメールマガジンのバックナンバーです。)

9月ももうすぐおしまい。
突発的(!?)なシルバーウィークがあったりして、
今年の9月は妙に短かった気がしますね。

さて、今回のテーマは「ガラスの合わせ」です。
「合わせ」という言葉は、自動車の窓ガラスなどにも
使用される「合わせガラス」(複層ガラスの間に樹脂などを
入れて割れにくくしたガラス)にも使われますが、
この場合は、異なるガラス同士をくっつけて使用しても
割れないかどうかを指します。
英語で言うと“Compatibility”ですね。
「合う」ということは、ガラスをゆっくり冷ました(徐冷)後で、
ガラスの中に歪が残らないということです。
歪が残っていると、簡単な衝撃で、あるいは何もしなくても
ガラスは割れます。

ガラス同士が「合う」かどうかは、大変重要なことです。
ガラス作家の方がせっかく作品を作っても、後で割れてしまったら
大変です。
ですから、我々、ガラス材料に携わる者にとって、
「合う」かどうかについては、とても神経を使います。
この「合わせ」を判断する時に、良く使われるのが
膨張係数です。
膨張係数については、以前にもガラスの用語集で紹介しました。
http://www.glass-kougeihiroba.jp/arekore/index05.html

ですが、そのページでも書いたように、「合わせ」を見極めるのに
決して膨張係数が万能ではありません。
むしろ、膨張係数に頼るのは危険かもしれません。
膨張係数はガラスの20℃〜300℃の平均的な伸び縮みに
すぎませんから、膨張係数が合っているガラス同士でも
300℃よりもはるかに高い温度から冷めていく時の伸び縮みの変化は、
必ずしも一致しているとは限りません。

また、ガラスの高温での粘性(やわらかさ)はその組成によって違いますから、
組成の違うガラス同士だと、膨張係数が同じでも、ちょうど固くなっていく温度域
での片方のガラスの粘性が、もう一つのガラスの粘性より少し固ければ、当然
そこに歪を生じさせてしまいます。
このように、膨張係数は「合う」かどうかのひとつの目安にすぎないのです。

では、二つのガラス同士が「合う」かどうかは、どうやって判定する
のでしょうか?
答えは、「合わせてみないとわからない」ということになります。
無責任なようですが、それくらい、微妙なファクターがからんでいて、
事前にガラスの設計上で完全にガラスを「合わせる」というのは、とても
難しいことなのです。

出来るだけガラスを「合わせる」ための一つの方法として、ガラスの組成
の中に鉛や亜鉛などの金属成分を入れることによって、ガラスの歪を起こり
にくくするといった方法があります。特に鉛は、かなり有効な成分です。
当社のAスキ(膨張係数 α=103)と、海外メーカーの膨張係数が
公称92〜93ぐらいの色ガラスを合わせて使用しても、割れないケースが
あります。これは、おそらくその色ガラスにたくさん酸化鉛が含有されて
いるので、馴染みやすく割れに到らないのではないかと思います。
そのせいか、その性質上酸化鉛を含有することの出来ない赤や黄色の
色ガラスについては、海外メーカーのものは当社のAスキと合わない
という話は良く聞きます。念の為、もちろん当社の赤や黄色はAスキと
問題なく合っています。

一方、当社のサングラス・シリーズは、基本的にすべての色ガラスについて
ベースのガラス組成を統一しています。同じ組成同士のガラスですから、
これまで述べてきた問題は起こりにくくなっています。
ただベースを同じガラス組成にしても、着色剤の添加により微妙にガラスの
粘性や冷め具合が変わりますので、その組成の補正は常に心がけています。
Aスキはご承知の通り鉛フリーです。ですから、より慎重に当社のガラス
同士の「合わせ」状態には気を配っています。
新しいガラスを開発するたびに、「合わせ」のテストは必ず行なっています。
Aスキ、FAスキをご使用の工房様は是非、「純正」サングラスカラーを
使用されることをお勧めします。
また、ガラスの種類によってはその物理的、化学的性質上、「合わせ」の
コントロールが難しいガラスがありますので、Aスキと各ガラスの「合わせ」
状況について当社担当者に気軽にお問い合わせ下さい。

この問題はアメリカのガラス素材メーカーであるブルズアイのHP
でも紹介されています。
英語ですが、興味のある方はご覧下さい。
http://www.bullseyeglass.com/pdf/technotes_tipsheets/TechNotes_03.pdf

今回は、ガラスの基本中の基本である「合わせ」について
考えてみました。あー、しんど。

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