Backnumber
−続・ガラス原料あれこれ(76)−
[キャスティングと失透]
※(続・ガラス原料あれこれは当社のメールマガジンのバックナンバーです。)
今年の夏は記録的な猛暑になりました。
もうすぐ9月なのに、未だに猛暑日が続いています。
そもそも、かつては猛暑日(気温が35℃以上)なんて、
夏のシーズンに日本のどこかで一回起こるかどうかぐらいの
ものだったですよね。
これが今年の夏だけではなく、これからも頻繁に起こると
すれば、空恐ろしいことです。
さて、今月のテーマは「キャスティングと失透」です。
ガラスと失透(結晶化)の関係については「あれこれ」のページでも
何度かご紹介したことがあります。
そのひとつです。(ガラスの熱履歴)
http://www.glass-kougeihiroba.jp/arekore/index09.html
ガラスは結晶を持たない、いわゆる「過冷却液体」ですが、
原子が自由に動く状態(液相温度)を長く保つと、
原子同士が結びついて、結晶を作ろうとします。
これを積極的に利用したのが「結晶化ガラス」で、
結晶を作ることによってガラスに新しい機能(たとえば
低熱膨張性とか)を与えるものです。
逆に、意図せずに結晶が出来てしまう現象を「失透」と
言います。透明さを失うということですね。
結晶が出来ると多くの場合、その場所が白くなり透明性
がなくなるので、こういう呼び方をしますが、
結晶現象が起こっていても透明さを保つ場合もあります。
「結晶化」と「失透」は本来同じ現象です。
さて、この「失透」の現象は主に溶融ガラスを成形する際に
ガラスの欠点となって問題になりますが、既にガラスに
なったものを加熱して加工する場合にも、失透現象は
起こる場合があります。
たとえば、キャスティングという技法。
ビレットなどのガラスを型に入れて、加熱することによって
型と同じ形のガラスを得る技法ですね。
この場合、ガラスが小さなものではあまり大きな問題には
ならないのですが、大きなガラスの塊を作成する場合、
全体をスムーズに型になじませるために、加熱温度を
高くしかも長い時間保持することによって、ガラスの中に
結晶が起こることがあります。
そうすると、当然ガラスの中に不均一が起こりますので、
割れなどの問題が出てきます。
もともと、大きなガラスの塊になると、徐冷も難しいので、
割れの原因がそちらに求められるケースも多いのですが、
こういう「結晶化」のファクターも実はあると思われます。
このことを確かめるには、ガラスの表面を研磨してみると
一定方向の模様が浮き出てくることで判定できます。
結晶化が起こっていなければ、つるつるのままですから。
このことを避けるためには、加熱時に軟化温度よりあまり
高い温度にしないことと、あまり高温を長時間保持しない
ということが大事です。しかし、ガラスの大きな塊を
均一に温度を上げていくのは難しいので、どうしても
上に述べたような現象が起こりやすくなります。
このように、ガラスはその性質として、いったんガラスになっていても、
その後の熱の加え方で(熱の履歴)その状態が変化するのです。
グラスバッチで溶融プログラムが重要なのと同じくらい、
ガラスカレットでも温度の管理が大変重要なのです。
徐冷は慎重にやっても、加熱の過程については少し無頓着な
傾向があるような印象があります。
そういう意味では、ガラスは非常にデリケートで、まさしく
「いきもの」というようなものですね。
ところで、早くこの日本を誰か徐冷してくれませんかね(大汗;)。
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