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ガラスの着色剤−還元雰囲気
 次は、「還元雰囲気」で発色させる着色剤です。「酸化雰囲気」系と違い、 「還元雰囲気」系の着色の場合には、少し話しが複雑になります。そこで原料別ではなく、 発色の色別に話をすすめることにします。
 また、「酸化雰囲気」系の着色とは違い、「還元雰囲気」系の着色の場合には、 スキのガラスに着色剤を添加すればすぐに その色になるという訳にいかず、ガラスのベースから設計する必要があります。
[ アンバー系着色 ]

 アンバーとは琥珀の色を指します。琥珀は松ヤニの化石ですね。ジュラシック・パークの琥珀中の昆虫の話を 思い出します。このアンバーの色とビール瓶などの茶色の色は基本的に同じ着色系となります。
 アンバー〜茶は、ガラスを還元雰囲気にした上で、鉄分硫黄を添加することによって、 得られます。それによって、ガラス中に多硫化鉄を生成させる訳です(といってもピンときませんよね)。 使用する原料は、カーボン(ガラス溶融時に酸素を奪い還元雰囲気にします)とそれに硫黄 または芒硝(Na2SO4)酸化鉄などです。色を濃くするには、それらの原料を増やすことと、 あるいは酸化マンガンなどをさらに添加したりします。
 ということで、たとえばビール瓶のような茶色のガラスと透明ガラスは混ぜることができません。もし、 まぜたら変な緑色の汚い色のガラスができあがるだけです。だから、分別回収に努力しましょう!ということに なるわけです。
[ セレン赤〜カドミ黄 ]

 さて難物のセレン/カドミ系発色です。セレン赤〜カドミ黄セレン化カドミ(CdSe)硫化カドミ(CdS)によって着色されます。硫化カドミ100%で黄色セレン化カドミが増えるに従って、オレンジ〜赤色となります。
 この場合にも還元雰囲気とするためにカーボンなどの還元剤と、それから酸化亜鉛(ZnO) を添加します。 酸化亜鉛カドミを揮発させないために、必須の原料となります。また、この色の場合、溶融時から急冷した場合と そうでない場合で発色が変わってきます。そのあたりも難しい所です。またこの系の色ガラスはが厳禁で、 鉛クリスタルガラスと合わせた場合黒化してしまうので、注意が必要です。
 原料としては、硫化カドミ(CdS)金属セレン粉末(Se)を使用します。またあらかじめ両方を反応させて 発色しやすくしたグラスファインカラー(GFC)という原料もあります。
[ 金 赤 ]

 金赤です。文字通りを使います。ただし金そのものは容易に溶けないので王水(学校で習いましたね。濃塩酸と 濃硝酸を混合したもの)に溶かして使用します。またあらかじめ反応させた塩化金酸(HAuCl4・nH2O)を 使用する場合もあります。
 金赤はワイン・レッドのような少しだけ青みを帯びた鮮やかな赤を与えます。しかし発色は非常に 難しく、溶融条件や成形した時の温度具合(いったん冷やしてまた加熱する)で色が変化したりします。
 また、使用する原料も金だけでなく、酸化第1錫(SnO)も添加します。金赤は弱い酸化雰囲気下 で溶融します。
[ セレン・ピンク ]

 セレン・ピンク金属セレン単体で発色させます。きれいなピンク色なのですが、条件によって非常に 色が変わりやすく、セピア色になったりします。そのため確実にピンクを得たい時には、少し高価ですが、 前の章で書いた酸化エルビウムを使用するケースが増えてきました。
 セレン・ピンクは弱い酸化雰囲気で溶融します。
[ 銅 赤 ]

 銅赤は、亜酸化銅(Cu2O)または金属銅粉(Cu)を使用して、還元雰囲気で溶融します。 また、添加剤として酸化第1錫(SnO)も使用します。 これも非常に発色を安定させるのは難しい色です。
 江戸切り子などの少し暗い赤色が銅赤です。  
 
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