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ガラスの用語集(1)

 ガラス原料あれこれの最後は、ガラスの用語集。このコーナーでも何気なく使ってきたガラス特有の用語、言葉を 解説してみたいと思います。


[ 熱膨張係数 ]

 ガラスが熱によって膨張する度合いを表したもので、正確には平均熱膨張係数といい、
[ 係数x10−7/℃ ]
で表します。ガラスにとって、熱膨張係数は大きなファクターとなります。
 まず一つには、「硬質ガラス」「並ガラス」の違い。熱膨張係数が低いガラスを 「硬質ガラス」と呼びます。これは、実際のガラスの硬度が固いという意味ではなく、熱膨張の度合いが低ければ、 熱衝撃−すなわち急冷したり、熱を加えたりなどの熱変化−に対して強くなるので、そういうガラスのことを「硬質ガラス」 とよんでいる訳です。熱膨張係数は、硬質ガラスで30〜50x10−7/℃ぐらい。 ビンや板ガラスなど一般的な並ガラスで90〜100x10−7/℃ぐらいです。
 それから、もう一つは、いわゆる「合わせ」の問題。違う種類のガラスを合わせて使用する場合、それぞれの ガラスの熱膨張係数が合っている必要があるのです。そうでないと、ガラスを成型する1000℃から1200℃ の温度から、室温まで冷めていく間に(もちろん、ゆっくり徐冷しながら冷ますのですが)、 ガラスによって収縮の度合いが違うと、割れてしまうのです。
 この「合わせ」の問題は、大変微妙な部分があります。熱膨張係数は、室温(または0℃)〜300℃ の間のガラスの熱膨張の平均値で表します。ところが、ガラスが実際に固くなり始めるのは、300℃よりも もっと高い温度であるために、たとえ熱膨張係数が数字上合っていても、割れるというケースが出てきます。「合わせ」 に関しては、最終的には、実際に「合わせ」てみないとわからないという部分があります(それって、すごく不安ですが^^;)。 また、もともと「合っている」ガラス同士でも、着色剤を入れることで、ガラスの冷め方が変わって「合わなく」 なるケースもあるので、注意が必要です。


[ 溶融雰囲気 ]

 ガラスを溶融する際の炉の中の雰囲気のことをさします。酸化雰囲気というのは、炉内の酸素が多い状態、還元雰囲気は、 酸素が足りない状態を言います。
 どうして、そんなことが大事かというと、色ガラスのお話の中で、何度も触れた通り、着色原料によっては、 溶融雰囲気によって発色の具合が変わってくる訳です。というか、色によっては酸化、還元雰囲気が絶対条件になります。
 酸化雰囲気にするためには、酸化剤−具体的には硝酸ソーダ(天然物はチリ硝石といいます)などの硝酸化合物を 入れるのが一般的です。
 還元雰囲気にするには、還元剤−カーボン、松ヤニなどを入れます。要するに「燃えるもの」を入れることによって、 炉内の酸素を足りなくさせる訳です。
 もう少し説明しますと、カーボンや松ヤニの中の炭素Cと空気中の酸素O2がくっついて(燃えて)、
C+O2→CO2になり、それで炉内の酸素を少なくするという理屈です。
 この溶融雰囲気の問題は、溶融、清澄(泡を切ること)にも大きくかかわってきます。 一般に、酸化雰囲気の方が溶融、清澄がスムーズに行われ易いといえます。 逆に、還元雰囲気のほうが難しくなります。

 

[ ガラスの徐冷 ]

 ガラスにとって、徐冷はとっても大事なことです。ガラスは、高温で溶融し成型したあと、徐々に温度を下げて 常温に戻します。その際、急激に冷やすとガラスの中に歪みが生じます。
 それを避けるために、一定の温度カーブでガラスを徐冷して行きます。その際重要になるのは、 徐冷点歪点です。徐冷点歪点の定義は少しややこしいのですが、 簡単に言えば、徐冷点は、その温度以下ではガラスの歪みがなくならないという温度で、 歪点は、その温度以下では歪みは発生しないという温度です。徐冷点は板ガラス、びんガラスで 550℃ぐらい、鉛クリスタルガラスでは450℃ぐらい、硼珪酸ガラス(硬質ガラス)では550〜600℃ ぐらいです。また、歪点徐冷点より30〜100℃ぐらい低くなります。
 当社のAスキは、徐冷点481℃、歪点436℃となっております。
 徐冷の際には、特に徐冷点から歪点までの間をゆっくりと温度を下げて行くことで、 ほぼ歪みの発生は防ぐことが出来ます。また、歪みの入ったガラスでも、このように再加熱/徐冷 することによって、歪みを除去することが出来ます。
 ガラス工場では通常、成型後、レアー(徐冷炉)に入れて徐冷を行います。


[ ガラスの化学耐久性 ]

 ガラスは、簡単に言うと溶けにくい<珪砂(SiO2)ソーダ分(Na2O)などを添加して溶け易くしたものだと 言うことができると思います。そのため、その成分によっては、ガラスの化学耐久性が変わってきます。ソーダを たくさん入れすぎると、あとでアルカリ分(ソーダ分)がガラスの中からにじみ出してくる現象−粉をふいた ような状態−が起こります。これは極端な例で、一般の板ガラスやびんガラスでは、そういうことはまず 起こりませんが。
 ガラスの化学耐久性を計る一つの基準として、アルカリ溶出試験という方法があります。これは、ガラスから どれくらいのアルカリ(ソーダ分など)が表面から出てくるかを計る試験(JIS3502)です。食品衛生法 ではアルカリ溶出量が3.0mg以下と定められています。
 ガラスの化学耐久性は、アルミナ(Al2O3)や、酸化亜鉛(ZnO)などを入れることによって、また ソーダ分硼素分(B2O3)で置き換えることによって増します。
 
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